有機則の改正、コロナ禍の到来、ワクチン効果による景気回復など、様々な社会現象で混迷する中、産業用インクジェットの国内市場は大きな変化を遂げました。ここでは、産業用インクジェットプリンターの市場動向や企業動向について詳しく解説します。
2020年には「コロナショック」という世界不況の到来があり、プリンター市場、特に小文字用IJP(CIJ式)への影響は大きく、2020年上期にはマイナス景気が続きました。
しかし、その後にはワクチン大量製造による「ワクチン効果」で回復基調に。大文字用IJP(DOD式)はコロナの影響を受けなかったものの、開発技術の進歩によるトレンドの変化から需要が高まりつつあります。
コロナ禍の大打撃を一番に受けたのが小文字用IJP(CIJ式)です。コロナ禍による物流の停滞や生産率の低下など、様々な社会問題の煽りを受けたことが原因で、需要が大きく低下してしまいました。
小文字用IJPの国内数量はピークであった2018年の4,280台から一気に落ち込み、2019年には3,960台、2020年には3,670台と2年で600台近い減少を記録。
しかし、ワクチン大量製造による印字機器の需要上昇を受け、2020年下期頃から一転して好景気の兆しが。2021年には3,820台まで増加し、翌年の2022年には3,980台になるであろうと予測されています。
大文字用IJP(DOD式)は安定した需要を持ち続け、急増した2017年には国内数量が3,180台に到達。その後も若干の増減はありましたが、コロナ禍による打撃の影響は少なく、2022年には3,470台に届く見込みで、さらなる需要の拡大が予想されています。
この小文字用IJPとの違いは、大文字用IJPの主な使用先である「段ボール」などの物流が比較的安定していた背景にあります。しかし、もし化粧箱など小さな個包装の物流が安定化すれば、今度は小文字用IJPとの競合激化は免れないでしょう。
依然として小文字用IJP市場の低迷は続いていますが、それを覆すかの如く様々な取り組みが行われています。
CIJ式のトレンドとしてはプリンター本体の高性能化や、コスパ見直しによる低価格化などが挙げられ、ワクチン大量製造をきっかけとした設備投資による活発化が期待されています。
大文字用のDOD式にもその傾向が見られ、安価かつコンパクトで使いやすいカートリッジ式のサーマルインクジェットタイプ(TIJ式)のプリンターの需要が高まっており、インク交換が容易なカートリッジタイプが好まれています。
新たにTIJ式を投入するメーカーも増え、2020年にはTIJ式の数量ベース比率がDOD式全体の64.8%にまで上昇。従来のピエゾ式からTIJ式に移行する企業も増えています。
また、2016年に施行された「有機則(有機溶剤中毒予防規則)」の改正も、産業用IJPのトレンドに大きな影響を与えました。
溶剤系を使用しない「非有機則インク」による溶剤消費量の軽減、プリンター本体のメンテナンス性・環境性の向上化など、「環境保護」を意識した動きに変化しつつあります。
このように、さまざまな面で産業用IJPが導入しやすい環境が整いつつあり、産業用IJP市場のさらなる需要上昇と、それに伴う規模拡大が見込まれています。
大文字用IJP(DOD)市場において国内トップ、小文字用IJP(CIJ)市場においては国内第2位のシェアを誇る「紀州技研工業」。
紀州技研工業がここまでシェアを拡大する理由の背景に、インク開発力の高さが挙げられます。
インクジェットプリンターというと、プリンターのスペックや性能が高ければ理想の印字品質が保てると思いがちな方もいるのではないでしょうか。
しかし、実際に商品に付着することを考えると、プリンターだけではどうにもならない「インク品質」が重要となってきます。
私たちの身近にあるもので想像してみましょう。例えば、食品のパックやお菓子の箱、飲料のボトルをとっても容器の形や素材はさまざま。製品の数だけ素材も形も異なります。それぞれの容器にインクが定着するか、読み取り可能な印字が出来ているかというのは、インク自体が商品に付着しているので、インクの品質の高さに左右される部分が大きいのです。
こうした課題に応えるべく、紀州技研工業では2018年6月和歌山県和歌山市に「インク研究所」を新設。
インク研究所の建物は、段ボール箱にバーコードを印字しているところをイメージしたデザインになっているのだとか。国内のIPJ市場を牽引している企業ならではのこだわりが光っています。
もちろん、インクだけではなく、紀州技研工業ではプリンター開発部門・インク開発部門・設計部門・ソフトウェア部門を設けてそれぞれの部門のプロが知恵を出し合って、日々お客様の課題解決に力を入れています。
プリンターとインク、2つのニーズを同時に満たせる独自の企業一貫体制こそ、紀州技研が人気を集めている一番の理由と考えられます。
紀州技研工業の公式サイトでは、プリンターの製品情報やインクに関する情報が余すところなく掲載されているだけでなく、紀州技研工業のホスピタリティを体感できます。ぜひご覧ください。