2016年、労働安全衛生法の改正によって溶剤系インクの取り扱いが厳しくなり、安全管理措置の手間やコストに頭を悩ませている業者も少なくありません。そこで注目されているのが、有機則の対象にならない「有機則非該当インク」です。
本項では、有機則非該当インクの詳細や、対応しているメーカーについて紹介しています。
産業用インクジェットプリンターで使用されるインクの殆どは、MEK(メチルエチルケトン)を始めとする「第二種有機溶剤」が含まれています。この溶剤には有害性があり、使用には有機則で規定された安全対策措置を遵守する必要があります。
「有機則非該当インク」は、有機則の対象となる溶剤を一切使用しない新しいタイプのインクです。有機則の安全対策が必要ないため、従来のインクよりも安全かつ簡単に導入できます。現場の安全対策・衛生管理といった観点から見ても優れており、各業界で需要が高まっているのです。
有機溶剤とは、他の物質を溶かす性質を持った「有機化合物」の総称です。インクや接着剤の溶媒として幅広く使われています。しかし、中毒性が高く危険な物質のため、「有機則(有機溶剤中毒予防規則)」により厳しい規制がかけられています。
そのため、有機溶剤を使用する業者には安全対策措置が義務付けられ、法令が定めた使用条件を満たす必要があります。このような事情から、従来の産業用インクを使用する際は、有機則の安全基準を遵守して管理コストをかけなければならなかったのです。
有機則非該当インクでは、有機溶剤の代わりにエタノールなどが用いられます。エタノールを用いたアルコール系インクは、インク特有の臭気も少なく製品に匂い移りしないので、現場の衛生を損ねることなく使用することができるのもポイント。
接着性や速乾性は従来のインクよりも劣りますが、様々なメーカーで研究や開発が進められ、現在では有機溶剤インクと遜色ない高品質インクも増えています。
ただし、全ての有機則非該当インクが安全とは限りません。なかには有機則に該当していないだけで、実際には有機溶剤と同等の有害性を持っているインクもあるので注意しましょう。
有機溶剤とは、他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物の総称です。溶剤として塗装、洗浄、印刷等の様々な職場での作業に幅広く使用されています。
有機溶剤は常温では液体ですが、揮発性が高いため蒸気となっ て作業者の呼吸を通じる、または油脂に溶ける性質から皮膚を通して吸収されるという特徴もあります。
※参照元:厚生労働省公式サイト 有機溶剤中毒を予防しましょう https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/120815-03.pdf
有機溶剤には500種類以上あると言われていますが、有機溶剤中毒を予防するための「有機溶剤中毒予防規則」では、54種類の有機溶剤が対象となっています。有機溶剤が5%を超えて含有している物質も対象となるため、製品に添付されているるSDS(安全データシート)等で確認することも必要です。どの有機溶剤が規制対象になっているかについて、次の項目で解説します。
有機溶剤は、毒性の強さによって第1種有機溶剤、第2種有機溶剤、第3種有機溶剤の3つに分類されています。数字が小さいほど有機溶剤の毒性が高いため、第1種有機溶剤が一番危険だと言えます。業務として有機溶剤を使用する際には有機溶剤中毒予防規則を守る必要があり、定期的な健康診断などを行うことも求められます。
有機溶剤中毒予防規則に該当する有機溶剤を使用している場合、雇い入れの際と、6か月以内ごとに定期健康診断を受信しなければいけません。また、取り扱っている有機溶剤の種類によっては代謝物など追加の検診も必要となります。
しかし、有機則非該当インクは有機溶剤中毒予防規則で対象となっている有機溶剤を使用していないため、年2回の特殊健康診断の受診が不要となります。
有機則非該当インクはインク独特の嫌な臭いがしません。金属から紙、木材、ガラス、PET、PAどの素材でも付着性が高く臭い移りもないため、食品パッケージにも使用できます。
有機則非該当インクを使うと、局所排気装置設備や防御マスクなどの使用義務がありません。また、作業管理測定紙による環境測定も不要となるため、現場作業の効率化、設備コストダウンなどのメリットが期待できます。
優れた印字技術を持つ
おすすめの産業用インクジェット
プリンターメーカー3選
各業界で有機則非該当インクの需要が高まっていることから、対応するメーカーも増えつつあります。ここでは、有機則非該当インクに対応している印字機器メーカーを紹介しています。
※引用元:紀州技研工業公式サイト https://www.kishugiken.co.jp/
紀州技研工業では、2018年6月にインクの開発・トラブル対応を専門とする「インク開発部」を開設。
産業用インクジェットプリンターで印刷したインクが「アルコール消毒液」によって消えてしまうというケースが発生し、さまざまなメーカーで対策を講じましたが、紀州技研工業でも有機則非該当溶剤を使用しながら強定着・耐アルコールインクの独自開発を実現。インク開発に秀でたメーカーならではのラインナップでさまざまな印字ニーズを満たしています。
印字技術を取り扱っているプリンターの機種が他メーカーよりも多く、大文字用IJP(DOD式)と小文字用IJP(CIJ式)を合わせて22機種展開。プリンターとインク両方の開発・製造・提供を一貫して行う「自社一貫体制」を取っている国内メーカーです。
※引用元:日立産機システム公式サイト https://www.hitachi-ies.co.jp/
日立産機システムではユーザーの需要を満たせるよう、用途・目的に合わせて選べる豊富な商品ラインナップを展開。インクのバリエーションは非常に多彩で、耐アルコール性タイプや紫外線発光タイプなど特殊なインクにも対応。現在、人気を集めている「有機則非該当インク」の取り扱いも行っています。
日立産機システムの特徴は、「見やすさ」と「操作性」を考慮したユーザビリティ重視のシステム。簡単に操作できるシンプル設計など、誰でも使えるユーザーに優しい標準仕様となっています。
操作画面には大きく見やすい液晶タッチパネルを採用し、直感的に使えるユーザーインターフェースを搭載。豊富な機能を揃えており、画面一つで印字作業やデータ確認、プレビュー表示が可能です。
※引用元:ブラザーインダストリアルプリンティング公式サイト https://bipj.brother.co.jp/
ブラザーインダストリアルプリンティングでは、有機溶剤を使用しない安全インクのニーズを満たすべく「MEKフリーインク(有機則非該当インク)」に対応。有機溶剤と同等の毒性を持つ成分を一切使用せず、より安全な「アルコール性インク」をメインとしています。
「高速印字」や「過酷環境での使用」など、さまざまな特殊用途のニーズ対応を得意とするメーカーです。
インクジェットの主力製品「ドミノシリーズ」なら、超高速ラインでも追従できる「高速印字」や、粉塵が舞う過酷環境でも導入できる「高耐久」にも対応化。オプション機器を揃えることで、さらなるカスタマイズも可能です。
※引用元:イーデーエム公式サイト https://www.edm-net.co.jp/
イーデーエムでは自社独自の固形インクを使用しており、品質・補修性に優れています。また、このインクは溶剤不要の有機則非該当インクでもあり、安全性が高いのも特徴です。また、インク補充は固形ブロックのボトルを挿入するだけのメンテナンスフリー仕様となっています。
1970年の創業以来、50年に渡って表示機器業界に携わってきた専業メーカーです。インクジェットプリンターは、段ボールや発泡スチロールの印字に適したピエゾ式DODがメイン。
その他、インクなどの消耗品、印字検査機を始めとしたオプション機器の開発も行っており、包装現場での使用に特化した製品が揃っています。
※引用元:マーケムイマージュ公式サイト https://www.markem-imaje.com/ja/home
マーケムイマージュではインクなどの消耗品も自社で製造しています。一部のモデルは予防対策コストのかからない「MEKフリーインク(有機則非該当インク)」にも対応しており、より安全なアルコールベースのインクを提供しています。
マーケムイマージュのプリンターは、「最大限の稼働時間」と「最小限の停止時間」がコンセプト。生産ラインの稼働時間を最大限まで向上するよう設計されており、生産ラインの効率性を引き上げることが可能です。
また、消耗品やメンテナンスなどのランニングコスト削減にも力を入れており、コストパフォーマンスの改善も図ることができます。
※引用元:アルマーク公式サイト https://www.almarq.co.jp/
アルマークの有機則非該当インクは、「速乾エコインク」や「耐アルコールエコインク」など、幅広い用途に応じたラインナップが特徴。紙製品だけでなく、樹脂・金属など浸透性の低い素材に対応できるインクも揃っています。
アルマークのプリンターは、IoT技術を活用したオンラインシステムを搭載しているのが特徴。プリンターをインターネット化することで、ワークフローやスタッフサポートなど様々な機能が利用できます。
プリンターの操作・設定時には、専門技術員によるクラウドサポートを受けられる他、必要があれば操作代行の依頼も可能。初めてのユーザーでも安心して導入できるプリンターが揃っています。
※引用元:モリコー公式サイト https://www.morico.co.jp/
製薬・医薬品業界で活躍を続けてきたモリコー。現場の衛生維持に特化した製品が揃っており、一部のモデルは「有機則非該当インク」にも対応可能。速乾性ながらインクトラブルに強く、低価格とメンテナンスフリーを実現したインクとなっています。
モリコーの主力製品である「ヘリオスシリーズ」は、インク漏れ・詰まりに強いカートリッジ式インクの産業用インクジェットプリンターです。
非接触型のDOD式プリンター「ヘリオスドライ」は、「有機則非該当インク」の対応によって低価格と低メンテナンス性を両立した高品質印字モデル。製品や現場を汚さず、清潔感を保ったまま使用できるモデルが揃っています。
当サイトでは食品や製品に印字する産業用インクジェットプリンターの国内メーカー全10社の中で、
・10種類以上のプリンターを開発・販売しているメーカー
・10か所以上の拠点があるメーカー
を優良メーカーと定義し調査しました。
該当した下記の3社について、各社の特徴と共にご紹介します。
※2022年1月31日時点のGoogleによる調査。食品や製品に印字する産業用インクジェットプリンターの国内メーカーに該当している全10社から選択しています。
※有機則の対象となる溶剤を一切使用しない「有機則非該当インク」に対応している3社を紹介しています。
メーカー名 | 紀州技研工業 | 日立産機 システム |
ブラザーインダストリアル プリンティング |
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問い合わせ先 | ![]() 引用元:紀州技研工業公式 https://www.kishugiken.co.jp/ |
![]() 引用元:日立産機システム https://www.hitachi-ies.co.jp/products/marking/ijp/ |
![]() 引用元:ブラザーインダストリアルプリンティング公式 https://bipj.brother.co.jp/printer/cat/inkjet/ |
プリンター 種類 |
22種類 | 12種類 | 12種類 |
拠点数 | 15 | 32 | 10 |
設立 | 1968年 | 2002年 | 2000年 |
こんな方に おすすめ |
カスレやムラをなくしたい、 製品の品質を向上させたい |
修理・メンテナンスを減らしたい、 インク詰まりを低減したい |
生産ラインを増やしたい、 稼働効率を上げたい |
大量生産する食品や日用品、工業用製品へ消費期限やロット番号、バーコードなどを印字する産業用インクジェットプリンター。
既に導入しているプリンターの老朽化で故障頻度が上がった、印字品質の向上が必要になった、生産ラインのスピードアップに対応しなければならないなど、企業に応じて課題は様々です。ここでは、解決したい課題に合わせて、おすすめの産業用インクジェットプリンターをご紹介します。
大規模工場の
生産性アップなら
KGK JET CCS7000
(メーカー:紀州技研工業)
引用元:紀州技研工業
https://www.kishugiken.co.jp/product/ccs/
生産性アップにつながる理由
定期的なメンテナンス
コスト削減なら
Gravis UX2-D160J
(メーカー:日立産機システム)
引用元:日立産機システム
https://www.hitachi-ies.co.jp/products/marking/ijp/
コスト削減につながる理由
寒冷地域で印字不良の
頻度を減らすなら
ドミノAxシリーズ Ax150i
(メーカー:ブラザーインダストリアルプリンティング)
引用元:ブラザーインダストリアルプリンティング
https://bipj.brother.co.jp/printer/printer-1004/
印刷不良を減らす理由