大量生産する食品や日用品、工業用製品へ消費期限やロット番号、バーコードなどを印字する産業用インクジェットプリンター。
既に導入しているプリンターの老朽化で故障頻度が上がった、印字品質の向上が必要になった、生産ラインのスピードアップに対応しなければならないなど、企業に応じて課題は様々です。ここでは、解決したい課題に合わせて、おすすめの産業用インクジェットプリンターをご紹介します。
大規模工場の
生産性アップなら
KGK JET CCS7000
(メーカー:紀州技研工業)
生産性アップにつながる理由
定期的なメンテナンス
コスト削減なら
Gravis UX2-D160J
(メーカー:日立産機システム)
コスト削減につながる理由
寒冷地域で印字不良の
頻度を減らすなら
ドミノAxシリーズ Ax150i
(メーカー:ブラザーインダストリアルプリンティング)
印刷不良を減らす理由
主に食品分野で利用されているパウチ(パウチ袋・スタンドパウチ)。産業用インクジェットプリンターでパウチに印字した事例をご紹介します。
パウチへの印刷は、容器に成型される前の素材の段階で印刷されるというのが大きな特色。その上で印刷方法は大きく分け、「グラビア印刷」と「デジタル印刷」があります。「グラビア印刷」は雑誌のカラーページなどでもお馴染み。図柄を構成する色ごとに印刷阪(グラビア版)を個々に制作し、1色ずつインキを乗せて、フィルムに印刷していきます。ロット数の大きな製品のパウチ印刷に適しています。
対して「デジタル印刷」は、パソコンで作成した画像ファイルを家庭用のインクジェットプリンターで印刷するような、データから直接印刷する方式。印刷阪(グラビア版)を作成する必要がないため初期費用を軽減できるのが大きなメリット。一方でCMYK4色と白しか用いることができないため、表現の幅は限られます。
上記でご紹介しています通り、デジタル印刷はパソコンなどで作成したデータを直接プリンターに転送して印刷するという方法。グラビア印刷のように1色ずつ印刷阪を作成する手間暇やコストが掛からないため、印刷費用が軽減できるというのが大きな魅力。印刷の品質面ではグラビア印刷に及ばないというのが弱点ですが、近年では技術革新により、表現力も向上傾向にあります。また小ロット印刷にも柔軟に対応できるため、例えば数量限定の商品や、限定〇〇個といったノベルティのパッケージ印刷にも適しています。
近年では環境配慮の意識の高まりや、ライバル商品との差別化といった要因により、パウチにも様々な種類がお目見えしています。例えば大手印刷会社の凸版印刷では、ボイル殺菌や電子レンジ加熱への耐性が不可欠なレトルト食品向けパウチに、デジタル印刷を可能とする技術を開発。
また環境への配慮、リサイクル促進の観点から、プラスチック使用料を減らした「減プラ」やアルミ箔を使用しない「アルミレス」、バイオマスPETを用いた「バイオマスパウチ」、紙をメインとした「クラフトパウチ」など、従来のラミネート素材を代替する様々な素材を用いたパウチがお目見えしています。
以上の通り、ひと口にパウチと言っても、現在では用途やニーズ、さらには環境配慮への姿勢のアピールといった観点により、パウチの素材も百花繚乱。従来のようなラミネート素材一辺倒ではなくなっているという時代となりました。
それゆえ、パウチ印刷に用いるインクジェットプリンターを選定する際には、どのようなパウチ素材なのか、どのような製品を内包するパウチなのか、印刷するのは画像なのか、文字なのか、どの程度の印刷品質を求めるのかといったことを、総合的に判断して選ぶことが肝心です。
高温殺菌処理を施す食品パウチに賞味期限を印字した事例です。使用した産業用インクジェットプリンターは、ブラザーインダストリアルプリンティングが展開するドミノAxシリーズのAx350i。インクは耐ボトル殺菌・耐アルコール・耐油性を持った黒インクを利用しています。パウチを高温で殺菌した際に印字が薄くなる心配がなく、アルコール噴霧や油の付着で消えないのも特徴。定期メンテナンスはモジュール交換のみでよいため、保守コスト削減も実現しています。
スタンドパウチに賞味期限を印字した事例です。利用している産業用インクジェットプリンターは、アルマークのリンクス8900。連続式の産業用インクジェットプリンターで、最大13ミリまで印字の大きさを調整できます。また、紙や金属など幅広い素材に対応しているため、汎用性が高いのもメリットです。パウチに賞味期限を印字したい場合だけでなく、ロット番号や製造番号の印字にも適しています。独自のバルブクリーニングシステムも搭載しており、長時間安定した印字が可能です。
パウチ(パウチ袋・スタンドパウチ)へ印字する際は、慎重にインクを選ぶ必要があります。
もし印字の対象となるパウチが食品の場合、水や加熱、アルコールに耐性を持ったインクを選びましょう。これらに耐性がないと、パウチが水に触れた際や、加熱殺菌時に印字が薄まるおそれがあります。アルコールの噴霧時に消えるリスクもあるため、耐水・耐加熱・耐アルコールを備えたインクを選ぶことが重要です。産業用インクジェットプリンター導入時にメーカーへ相談してみましょう。
パウチの印字には、耐加熱や耐アルコールを備えたインクが必要ですが、主に以下のインクが用いられています。
CP109黒(MEK系)は、紀州技研工業で扱われているインクです。にじみや転写が起こりにくく、120度で加熱しても剥離することがありません。
CN104H黒も紀州技研工業で扱われているインクです。100〜120度で加熱殺菌しても剥離が起こりません。
パウチ向けに産業用インクジェットプリンターを導入するなら、CIJ方式の製品を選びましょう。連続式インクジェットプリンターとも呼ばれており、本体やプリンタヘッド内部を常時インクが循環しています。インクはポンプで噴出され、賞味期限や製造年月日、ロット番号などを印字します。
インクバリエーションが多いため、対応している素材も豊富。プラスチック製品や金属、ガラスなどの表面に印字可能で、数ミリ程度の小さな文字をスピーディに印字できます。パウチの他にも、缶やチューブ製品でも用いられています。
産業用インクジェットプリンターは、パウチに賞味期限やロット番号を印字したい時に適しています。ただし、食品用パウチに導入する際は、水や加熱、アルコールに強いインクを選びましょう。